フィンランド of フィンランド

 北欧の小国であるフィンランドの教育が,世界中の注目を集めている.そのきっかけは経済協力開発機構(OECD)が2000 年から3年に一度実施している国際学力調査(PISA)である.PISAの目的は,実生活の様々な場面で遭遇する課題にどれだけ対処する知識や技能を生徒たちが備えているかを調査し,各国の教育にフィードバックDSC_0323.JPGすることである.それは,日本の多くの試験やテストのように,決められた学習内容を習得しているかどうかを評価するものではない.
今回,フィンランドの教育における教育的効果について平成23年2月にフィンランドの小学校の授業のアーカイブを通じた授業分析から定量的に明らかにし,フィンランドの教育メソッドを抽出し,今後の教育養成に取り組みたいと考えている.ここではフィンランドにおける教育の特色とICT活用について報告する.

フィンランドの教育事情

フィンランドの教育

PISA

国際学力調査(PISA)の対象は,OECD 加盟国を中心とした15 歳児(義務教育課程修了年次に相当する)である.調査される分野は,読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシー,問題解決力であり,各回では重点的に調査される分野が決まっている.2000 年は読解力,2003 年は数学的リテラシー, 2006 年は科学的リテラシー,2009年は読解力(「読解力とは,自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力である.」)と順番に調査された.
フィンランドは,2000 年と2003 年のPISA において,すべての分野でトップグループに入っており,特に読解力の高さは群を抜いている.また成績の上位層と下位層の差が参加国中でもっとも小さい.
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授業分析

 また, フィンランドは,世界経済フォーラム(WEF)が毎年実施している国際競争力調査においても,2010年には世界第2位,2009年には国民1人あたりのGDPでも上位になっている.教育を経済力に結びつける国策が成功している国と言える. こうした優れたフィンランドの教育については,「平等の徹底」,「落ちこぼれを作らない」,「学校や教師の自主性」,「家庭環境」,「生徒たちを競争させない」,「手厚い教師教育」,「コミュニケーション力の重視」など様々な表現で示されている.DSC_0197.JPGしかしこうした報告の中には,授業分析や学習プロセスという視点が欠如している.そこで本研究では,フィンランドの教育の根本にある教育観および学力観の視点から,実際に小学校の授業を多視点でアーカイブした映像から得られた授業分析に基づき考察する.

OECD生徒の学習到達度調査( - せいとのがくしゅうとうたつどちょうさ、Programme for International Student Assessment, PISA)とは、経済協力開発機構 (OECD) による国際的な生徒の学習到達度調査のこと。