国立教育研究所Part1 of フィンランド


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フィンランド国家教育委員会 (FNBE:Finnish National Board of Education)

 フィンランドの教育政策において中心基盤となるのは,年齢,居住地,経済状況,性別,母国語などに関わらず,全ての国民に教育を受ける平等な機会を提供することである.そのため就学前教育,基礎教育,後期中等教育は無料の原則をとっている.学費,福祉サービス,給食はこれらの教育期間において無料提供され,必要な教材や教科書も,就学前から基礎教育までは無料である.また基礎教育期間の通学に関しても教育提供者(自治体)が受け持っている.ここでは,平成23年2月に行ったフィンランドの教育省の聞き取り調査よりフィンランド教育の特色を示す.

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言語と教育指導

 フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語.およそ6%強の生徒が義務教育と後期中等教育をスウェーデン語でおこなう学校に通っている.高等教育に関しても,それぞれの言語で受けられる.さらに全ての,または一部の指導を外国語(多くが英語)で行う学校もある.北極圏ラップランドのサーメ語地域ではサーメ語教育が自治体で課されている.またロマ(ジプシー)語やその他のマイノリティへの教育機会を整えること,手話による教育も配慮されている.
 教育の平等を実現するには,教育指導が欠かせない.基礎教育の最初の6年間,教育指導は日常的な指導の中に組み込まれる.また中等教育のカリキュラムでは,生徒を個別でカウンセリングする時間を特に設けたりする.これは生徒たちがそれぞれの学習効果をあげつつ,将来の選択をより適切なものにするための支援・指導をそのねらいとしている.

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教育の決定と自治体の機関

 教育は教育省がその責任を担い,国家教育委員会は教育省と共に,教育の指針,内容,就学前教育に始まり成人教育にいたるまでのメソッドを検討改善していく.またフィンランドを6つに分けた各地方には,これらの案件を処理していく教育文化部門が設置されている.地方自治体は教育当局としての任を担い,教育提供者としての中心的役割を果たす.
 地方自治体は学校に委ねる裁量を決定する.学校は自分たちの方針や法で定められた基本的な学校の機能をまっとうさせ,教育サービスを提供する権限がある.ポリテクニックはそのほとんどが自治体による公立,あるいは私立である.大学はすべて国立で,最終的な決定権は大学が有している.

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監査ではなく評価

 外部からの学校監査というしくみはなく,国の機関による学校への監査介入はすでに廃止されている.教育提供者の活動内容は,制度や核となる国のカリキュラムという形で間接的指導を行い,教師がカリキュラムに課されているものを,それぞれのやり方で効果を出すことに拠る制度である.教師たちの自己評価と絶対評価を重視する.教育と実習に関する評価審議会は別にあり,基礎教育と後期中等教育および訓練の評価基準をプランしたりコーディネートしたり,あるいは機能改善の任を負う.ポリテクニックと大学に関しては,それぞれ独自の運営と成果で評価する責任がある.このため,それぞれが高等教育評価審議会からの援助を受けている.

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就学前教育と義務教育

 誕生から6歳まで,子供たちはデイケア・センター(保育園)や個人宅での小規模なファミリー・デイケア・グループに通うことができる.それぞれの出費は親の収入によって異なる.2001年から,6歳児は無料で就学前教育を受ける権利ができた.自治体がそれぞれ学校や保育園,ファミリー・デイケアセンターのどこで就学前教育を提供するかを決定する.これは法案に基づいて施行され,前述以外の場で提供されることもある.2004年,6歳児の95%が就学前教育を受けていた.
 義務教育が始まるのは7歳である.その後,9年にわたる義務教育ののち,高等学校教育または職業訓練学校教育へ,さらにポリテクニックや大学へと学業を続けることができる.

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