フィンランドにおける知識獲得
知識の元となる,学習プロセスについても,日本の教育とフィンランドの教育とでは考え方が異なる.児童たちから切り離された正解として知識を捉える日本では,学習のプロセスは,その正解である知識を裏付けるものである.一方,フィンランドの教育では,学習のプロセスは,主体である児童がアクセスできるすべてのリソースである.そのリソースには,自然や実験だけでなく,教科書も,教師も,インターネットも,すべて含まれる.そうした多種多様な状況を知覚することでさまざまな「情報」を児童は獲得する.そしてその「情報」を児童のもっている知識によって認識することで「表現」がなされる.例えば,雷の学習において,その発生のメカニズムとその対応を,様々な情報を示しながら体験的に学習することが求められている.
例えば,今回参観した授業のカリキュラムの「目標」である「雷の発生とその要因」,「雷のエネルギーと危険性」等という多様な情報の取得の「プロセス」から雷から安全に体を守る方法を考え,「表現」させる授業であった.
一方,日本の教育では,例えば小学校の理科の学習指導要領の目標は,「○○についての見方や考え方を養う」となっており,養った見方や考え方を表現することは求められていない.このような「目標」「プロセス」「表現」のセットを「知識」と見なす考え方は,知識科学では一般的である.フィンランドの教育における知識観は,このような知識科学における知識観に近い考え方である.