飛騨春慶の特徴

飛騨春慶塗とは、飛騨の伝統工芸品である、漆器のことです。 
飛騨春慶の一番の魅力は、木目の美しさがはっきりと分かるところにあります。他の産地の漆器には、不透明な漆を塗ったり、木地の上に絵を描くことが多いですが、飛騨春慶のは透漆で木地を塗るため、素材の持つ木目の美しさがよく見えるのです。
飛騨春慶は、木材を加工する木地師と、漆を塗る塗師という二種類の職人の手によって生み出されます。
国の伝統工芸品にも指定されています。

  木地師の技術を学ぶ
  塗師の技術を学ぶ

飛騨春慶の種類

飛騨春慶には、挽物、板物、曲物の三種類があります。それぞれ素材となる木材の種類が違い、素材の特徴を生かした制作をします。

挽物

挽物の茶道具。漆を塗る前挽物には、見た目が白い広葉樹であり、轆轤鉋で挽きやすい硬さを持つ、トチの木を主に使います。
トチの木を使った製品には、盆や菓子器、茶托、盛鉢があげられます。
ヒノキの木を使う場合は、吸い物椀や茶道具、カップにされることが多いです。

板物

板物に使う木材は、しなやかで美しい木目を持つ、ヒノキの木が多いです。
批目細工の製品を作る際は、サワラが使われることもあります。
板物は主に飾り棚として使われます。

曲物

コロ曲げを利用した曲物のお盆曲物に使う木材も、板物同様にヒノキの木が多いです。
曲物の最大の特徴は、木を曲げることにありますが、その曲げ方にも二種類あります。
一つはコロ曲げといい、丸太などに巻き付けるように転がし、曲げる方法です。もう一つは引き曲げといい、柔らかくした板を使い、角を丸く曲げていく方法です。
コロ曲げの主な製品には、盆、重箱、茶道具、花器など。引き曲げの製品には、盆、重箱、茶道具、膳などがあります。


飛彈春慶の技法

また、 飛彈春慶塗りは技法にも違いがあります。
下記の技法は、板物、曲物でよく使われ、春慶を更に美しく見せるものとなっています。

批目

 批目とは、年輪の柔らかいところを剥がして、人工的に批目を作る技法のことを言います。職人は鉋、ノミ、小刀を使い、丁寧に木目を彫っていきます。
この細工を行うには、柔らかい特徴を持つ、サワラの木が最も適しています。
漆を塗ることで批目が浮き出て、より、木目の美しさを楽しむことができます。

割目

 割目とは木材を特殊なナタで割り、その割目を生かして木地を作る技法のことです。木材の割る場所によって変わる模様が、割目細工を施した春慶塗の魅力の一つです。材料は批目細工と同じく、サワラが使われることが多いです。

鉋目

 木地が完成した後、特殊な鉋で表面に模様を彫る技術のことを鉋目と呼びます。
春慶塗は線が美しく表れるという特徴があるため、様々な種類の鉋目があります。

浮き出し

 浮き出しは、模様のついた鋳型を木に押し当て、そこから出た部分を削り取る技法のことをいいます。その木地にアイロンの蒸気をあてると模様がはっきりと浮き出て、漆を塗ることで、描かれた絵がはっきりと分かるようになります。

蒔絵・墨絵・沈金

透漆を塗り、木が本来持つ木目の美しさが自慢の春慶塗りですが、中には絵や模様を描いたものもあります。色漆と金粉、銀粉を使って絵を描く蒔絵、墨で絵や文字を書く墨絵・墨字。そして、漆の上に絵を彫り、そこに金粉を埋める沈金があります。