重箱を例に、塗りの工程を説明します。

①木地磨き

紙ヤスリで木地の角を磨き、丸みをつけます。

②目止め

トノコと呼ばれる、目の細かい粘土を水で練り、木地に塗ります。全体に塗り終わったあと、布で丁寧に拭き取ります。この作業は、漆の塗りムラを防ぐ効果や、着色の際に色がなじむ効果があります。

③着色、下塗り

着色には、黄か紅の染料を使います。
下塗りでは、大豆のしぼり汁か、ガゼイン(牛乳やチーズに含まれるリンタンパクの一種)を数回塗り、漆が急に木地に染み込まないようにします。
 

④仕上げ磨き

下地の表面を紙ヤスリで磨き、なめらかにします。

 

⑤摺り漆

生漆にえごま油を混ぜ、木地に摺り込み、綿で拭き取って漆を染み込ませます。
この作業を数回繰り返すことで、より美しく木目を見せることができます。
 

⑥コクソ巻き

漆とトノコを練り上げたもので、木地の隙間を埋めます。
 

⑦摺り漆

⑤で行った摺り漆の作業を再び行います。
 

⑧上塗り

木地に漆を塗ります。漆や道具は職人がそれぞれ、自分に合うように精製・手入れしたものを使います。
作業中の注意点は、ほこりがかからないようにすること、漆をムラなく塗ることの二つ。漆は22度から28度の温度と65%から85%の湿度で乾燥するため、漆の状態を見極めながら仕上げることが大切です。
 

⑨乾燥

「ふろ」と呼ばれる大きな戸棚のような乾燥室の中に入れて乾燥させます。適度な温度や湿度を保った中で、「塗りだれ」を防ぐために数分おきに回転させます。


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